「倉庫をリノベーションして、住宅に変える」
「ざっくりとした雰囲気で、ロフトがあって天井の高い住宅」は、リノベーション好きな人なら、憧れるイメージかもしれません。
ただ法律上、このような建物の使い方の変更(用途変更)をする場合、法律上の申請が必要な場合もありますし、住宅ローンの審査も適法性を求められるのが一般です。
例えば、「倉庫」→「住宅」は用途変更の申請は必要でしょうか?
「事務所」→「アトリエ付き住宅」への申請は必要でしょうか?
用途変更については、様々なケースがあります。
どのようなケースが、申請が必要でしょうか?
建築に関わる法律「建築基準法」には、用途についての規定があり、用途変更に伴う申請の要不要の要件の一つに、「新しい用途が「特殊建築物」に該当するかどうか?」があります。
特殊建築物とは、建築基準法第二条ニで定められており、用途変更に関係する用途は以下の一覧になります。
法別表第1
(一)劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場その他これらに類するもの
(二)病院、診療所(※)、ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎、児童福祉施設等
(三)学校、体育館、博物館、美術館、図書館、ボーリング場、スキー場、スケート場、水泳場、スポーツ練習場
(四)百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、待合、料理店、飲食店、物品販売業を営む店舗
(五)倉庫
(六)自動車車庫、自動車修理工場、映画スタジオ、テレビスタジオ
※1 患者の収容施設があるのみ
これらの用途をみると、大まかな傾向が見えると思います。不特定多数の人が集まる施設、避難上考慮すべき施設、燃えやすいもの、注意を払うべき施設等々だと思います。事務所や住宅は、このリストにはありません。この一覧に新しい用途がなければ、確認申請は不要になります。
Yes→CHECK02へ No→確認申請不要です!
用途変更で確認申請が必要かどうかについて、
「元々の施設が何であったかのか?」
というのも重要です。類似の用途であれば、その用途に因る法律適用の範囲は同じということになります。次の一から十一までの同じ項目の中の用途の変更であれば、確認申請は不要です。
(建築基準法施行令第137条の17)
一 劇場、映画館、演芸場
二 公会堂、集会場
三 診療所(※1) 、児童福祉施設等 (※2)
四 ホテル、旅館
五 下宿、寄宿舎
六 博物館、美術館、図書館 (※2)
七 体育館、ボーリング場、スケート場、水泳場、スキー場、ゴルフ練習場、バッティング練習場 (※3)
八 百貨店、マーケットその他の物品販売業を営む店舗
九 キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー
十 待合、料理店
十一 映画スタジオ、テレビスタジオ
※1 患者の収容施設があるのみ
※2 第一種及び第二種低層住居専用地域内を除く
※3 第一種及び第二種中高層住居専用地域内を除く
幾つか建物があるところの指定された用途地域により、同等の用途であっても確認申請が必要な場合があります。
元々の用途について注意点があります。
1.「現況の用途」=「確認申請上の用途」
2.「現況の用途」≠「確認申請上の用途」
現況の用途は、元々の確認申請上の用途と一致していますでしょうか?
建物新築後、その後の使い方が変わる事例はよくあることです。
例えば原状「店舗」として使われているところも、以前は事務所だったり、駐車場だったりする場合もあります。
当初の用途を調べて、確認申請の要不要を判断してください
Yes→CHECK03へ No→確認申請不要
リノベーションして、用途が変わる部分の面積は、200m2を超えますでしょうか?
(※法改正により100m2→200m2に変更されました)
Yes→確認申請要 No→確認申請不要
超えなければ、確認申請は不要になります。
ただし…..ここでも注意点があります。
「その建物内で、以前用途変更した区画はありますか?」
一棟まるごとフルリノベーションであれば、問題ありません。
例えば区分所有の店舗を用途変更する場合。自分の用途変更が100m2を超えていない場合でも、他の区画で、用途変更が行われている場合であれば、申請なしに用途変更が出来ないケースもあります。
「今回の用途変更面積50m2」+「他の区画の用途変更面積60m2」=110m2 > 100m2
このようなケースについては、国土交通省住宅局建築指導課長より「用途変更の円滑化について」として、平成28年3月31日付で助言が出されています(国住指第4718号)
・用途変更後の用途が、法別表第一(い)欄に掲げる用途(以下「特殊建築物の用途」という。)であり、かつ、その部分の床面積が100㎡を超える場合は、用途変更の手続きを要する。
・区分所有建築物等で、異なる区分所有者等が100㎡以下の特殊建築物の用途への用途変更を別々に行う場合に、用途変更する部分の合計が100㎡を超えた時点での用途変更の手続きは、特定行政庁が地域の実情に応じ必要と判断した場合に限り、その手続きを要する。なお、用途変更の手続きを要しない場合であっても、建築基準関係規定が適用されることはいうまでもないが、同一の者が100㎡以下の用途変更を繰り返し行う場合については、意図的に用途変更の手続きを回避しようとすることがありえるので、特に留意すること。
上記に通り、地域の実情に応じた判断がされる場合がありますので、注意が必要です。
詳細は各特定行政庁にお問い合わせください。
いかがでしたでしょうか?
用途変更の時に申請の要不要の判断は、以下のとおりになります。
CHECK01 リノベーション後の新しい用途が特殊建築物に該当するかどうか?
(※建築基準法法別表第1参照)
Yes→CHECK02へ No→確認申請不要
CHECK02 リノベーション前後の用途は類似したものかどうか?
(※建築基準法施行令第137条の17参照)
Yes→CHECK03へ No→確認申請不要
CHECK03 リノベーションして用途が変わる部分の面積が100m2を超えるか?
Yes→確認申請要 No→確認申請不要
それでは、冒頭の以下の用途変更は申請は必要でしょうか?
「倉庫」→「住宅」
「住宅」は特殊建築物ではありませんので、このケースは、増築等がない場合は、用途変更申請は不要です。
「事務所」→「アトリエ付き住宅」
「アトリエ付き住宅」は、様々なケースが有ります。住宅の内部にアトリエがある場合、共用部がある場合等々、建築基準法の扱いによって、用途変更申請が異なる場合もありますので、特定行政庁へ問い合わせをしたほうがいいでしょう。
今回のケースについては、いずれも増築等がない場合に限ります。用途変更の条件として、通例、検査済であることも求めらます。また申請が必要ない場合でも、法的に建築基準法の基準を順守する必要がありますし、用途変更後の新しい用途が認められない場合もあります。
個々により、状況は異なりますので、用途変更を検討される方は、特定行政庁や建築士へお問い合わせください。